暮らしを照らすということ。
2025.06.29 インテリア NEW
こんにちは、設計室の吉田です。今日は照明を建築と共に計画する事の豊かさについて綴りたいと思います。
先日、敬愛してやまない建築家アルヴァ・アアルトの実物件を見学してきました。見学したのは、アアルト自邸やアトリエ、図書館、レストランなど。建築用途は多岐にわたりますが、どの建築でも一貫したアアルトの「照らすこと」へのこだわりとある種の狙いを感じました。
それは、「人間の快適さや感覚への配慮」と「自然との調和」です。私の個人的な偏見以外の何物でもありませんが、20世紀を代表する建築家から私たち現代の作り手が、何か一つでも継承し、織りなす建築に活かせればと思い、恐れ多いこと極まりないですが言語化していきたいと思います。
ご紹介するのはレストランサヴォイ。こちらはアアルトが妻のアイノ・アアルトと共にインテリアデザインを手掛けたレストランです。こちらの照明計画に「人間の快適さや感覚への配慮」と「自然との調和」を感じました。

まずは照明の配置計画。バランスよくフロア全体を照らすのではなく、卓上照明やペンダントライトを使って各テーブルそれぞれを照らすように計画されています。食事を大切な人と過ごす貴重な時間と定義する彼にとっては、周囲の存在感を軽減させ、ある種のプライバシーを求めたのでしょうか。照明によって私達だけの空間に区切られて、まるで私達だけで焚火を囲っているような安心感と心地よさを感じました。
そして照明器具は、窓辺の席(写真向かって左側)には卓上照明、壁側の席(写真向かって右側)にはペンダントライト、そして中央席にはカバー付きシーリングライトと、窓辺との距離に合わせて異なる器具が採用されています。
来客に窓の外に広がるヘルシンキ市街が一望できる絶景を堪能させたかったのでしょう。その窓に最も近い席には、窓ガラスに反射しにくい低い場所に配置でき、かつ照度が低い卓上照明を採用し、窓辺から離れ照度が必要な場所でも、シーリンングライトにカバーをしたり、光が水平方向に漏れにくいペンダントライトを採用しています。窓ガラスに照明が反射せず、綺麗に窓の外が望めるように配慮することで、この場所の1番の魅力である絶景と調和しています。

造形美や華やかさを求める建築家が多い時代に、あくまで「人間の快適さや感覚への配慮」と「自然との調和」に重きを置いたのは、アルヴァ・アアルトの最大の魅力です。
私達、府内町家は「大分の暮らしを豊かに心地よく」をコンセプトとして、敷地それぞれの自然環境を読み解き、そこに住まう人の心地良さを追求しています。だからこそ建築は、室内を設る照明などのインテリアと、外部環境を整えるお庭と共に計画する必要があると改めて感じさせられました。
建築を通して、そこに過ごす人々に豊かさを与え続けたアルヴァ・アアルトに尊敬の意を表し、そして私自身、これからも自然と調和した心地良さを追求し続けることを心に誓い、文を締めます。