経年美化

2025.03.11 建築

作成者:井門 涼子

辞書には載っていない『経年美化』という言葉。
意味はその文字の通り、時間の経過とともに美しくなる、ということ。
広辞苑にも載っている『経年変化』という言葉から生まれたものですが、後者は品質が低下していくという意味で用いられることが多いです。
時が経つと劣化するのが当たり前と思いがちですが、『変化』を『美化』に置き換えて前向きに捉える言い回しは非常に素敵ですよね。

例えば革製品。丁寧に使えば使うほど手になじんで味が出る。これも『経年美化』。
漆器も大事に使われていると艶が出て色味に深みが増す。これも『経年美化』。

では新築と築30年のお家ではどちらが美しいと思いますか?答えは一つではありませんが、築30年のお家が美しいと感じるケースもあるということです。床の無垢材や外壁の塗り壁、庭の木々が年数を経て醸し出す美しさは新築のお家にはあり得ないもので、『時間』にしか作り出せません。現代にも伝わる古民家も『経年美化』そのものだと思います。

もちろんその美しさを持続させる為には日々のお手入れや大事に使ってあげることが大切。大変かもしれませんがそうすることで段々と愛着も湧き、その行いも生活の一部となっていきます。

自然素材を使っている府内町家は『経年美化』を感じることのできるお家。
時間の経過とともに変化する美しさをぜひ皆様に体感していただきたいものです。